契約不適合責任とは?瑕疵担保責任との違い

2020年4月1日に施工された改正民法で、従来の瑕疵担保責任が契約不適合責任へ改正されました。契約不適合責任とはどのような内容なのか、これまでの瑕疵担保責任とどのような点が異なるのかを詳しく解説します。

契約不適合責任とは

契約不適合責任は、売買や請負契約に基づいて引き渡された目的物が、「種類」「数量」「品質」に関して契約内容と異なる場合に、売主・請負人が、買主・注文者に対して負う責任のことです。

それぞれの例は以下の通りです。

1.種類について

ウォークインクローゼットを設置すべきなのに、引き渡されたのは通常のクローゼットだった。

2.数量について

収納棚を3つ設置すべき場所に、2つしか設置しなかった。

3.品質について

契約では無垢材を使用したフローリングなのに、実際には合板材が使われていた。

このような契約と実際引き渡された目的物が異なる場合、買主・注文者は、売主・請負人に対して補修や代替物などの引渡し請求や、代金・報酬の減額請求、損害賠償請求または契約解除権の行使をすることができます。

ただし、不適合を知った時点から1年以内に通知しなければならないので注意が必要です。

契約不適合責任と瑕疵担保責任の違いは?

これまでの瑕疵担保責任とは

瑕疵担保責任の「瑕疵」とは、通常であれば目的物が有している性能や性質を有していないことです。ただし、これまでの瑕疵担保責任では「隠れた瑕疵」が対象でした。つまり、一般的な注意では発見できない瑕疵に対してのみ責任が生じるというものです。買主・注文者が売主・請負人に請求できる権利は、損害賠償請求権と解除権だけでした。

「隠れていない瑕疵」にも責任を求められる

改正民法では、売主・請負人に責任が生じるのは目的物が種類・数量・品質に関して契約内容と不適合である場合となりました。これまでの瑕疵担保責任では、「隠れた瑕疵」が対象であったために、通常では発見し得ない瑕疵であるかどうかの見極めが非常に困難でした。

ところが、改正民法により、契約内容と違ったものを売主・請負人が提供した場合は、責任を負うという規定となり、対象が「隠れている」必要がなくなりました。

救済手段が追加

従来の瑕疵担保責任では、買主・注文者が請求できる権利は、損害賠償請求権と解除権のみでした。改正民法によって、以下のように救済手段が追加されたので、詳しく説明します。

履行の追完請求(追加の救済処置)

目的物の「種類・数量・品質」が契約と異なる部分について、買主は売主に対し「履行の追完」を請求できます(民法第562条第1項、第559条)。「履行の追完」とは、完全な目的物を引き渡すように求めることです。

前述の例で説明すると、以下のようになります。

1.種類について

通常のクローゼットを契約通りウォークインクローゼットに直す。

2.数量について

収納棚の不足分を追加で納品する。

3.品質について

合板材のフローリングを、契約通り無垢材で貼り替える。

代金減額請求(追加の救済処置)

買主・注文者が追完を催告しても、相当の期間内に売主・請負人が履行の追完を行わない場合、代金減額請求が認められます(民法第563条第1項、第559条)。減額される代金は、不適合の度合いに応じた金額となります。

また、履行の追完ができなくなったり、売主・請負人が相当の期間の経過前に履行の追完を拒否したりした場合には、相当の期間を待たずに、その時点で代金の減額を請求できます。

損害賠償請求(既存の救済処置)

買主・注文者は、売主・請負人に対し、履行の追完請求・代金減額請求と併せて、契約不適合責任に基づく損害賠償請求を行うことができます(民法第564条、第559条、第415条第1項)。

例えば、

  • 天井の雨漏りを買主自身が修理したので、修理代金を売主に対して請求する。
  • 雨漏りによって家財道具が汚損したので、その価額を売主に対して請求する。

といったことが可能です。

契約の解除(既存の救済処置)

履行の追完を催告したにも関わらず、売主・請負人が相当の期間内に履行の追完を行わない場合には、買主は契約を解除し、代金全額の返還を請求できます(民法第564条、第541条本文、第559条)。

ただし、不適合の程度を契約の内容や社会通念上の取引において軽微である場合には、契約解除までは認められないことがあります(民法第564条、第541条ただし書き、第559条)。その場合は、その他の救済を受けることになります。

しかし、そもそも引渡しが履行できない場合や、不適合を修正しなければ契約の目的を達成できない場合などは、無催告解除が認められています(民法第564条、第542条第1項、第559条)。

契約不適合責任の期間

買主・注文者が契約不適合責任を、売主・請負人に対して追求する際には、「責任期間内に」不適合があることを通知しなければなりません。その期間は、原則として「不適合を知った時から1年」です(民法第566条、第637条第1項)。

しかし、新築住宅では「品確法」による特則があります。それは、構造耐力上主要な部分および雨水の浸入を防止する部分について適用され、責任期間は強制的に「引渡しから10年」となります。

参照元:国民生活センター(https://www.kokusen.go.jp/wko/pdf/wko-202004_11.pdf)

参照元:ひかり総合法律事務所(https://hikari-law.com/j/column/4287)

特約不適合責任の免責

民法においては、当事者間の対等な契約が想定されており、原則的に契約自由の考えから、契約不適合責任を免除したり、制限したりする特約もあります。

特約の記載で免責が変わる

不動産売買においては、住宅の設備などを契約不適合責任の対象外とすることを特約として記載することがあります。契約不適合責任のトラブルを避けるために、売主側が特約として免責を契約書に盛り込む場合があるため、買主は契約の際によく確認することが大切です。

契約不適合責任は任意規定なので、契約する当事者が合意すれば免責となるので注意が必要です。民法・特別法上の契約不適合責任がどのようなルールなのか、特約の有無でどのように免責が変わるのかをよく把握しておくことが重要になります。

法改正によって増える可能性のある争点

改正民法によって増えると予測される争点に「帰責性」があります。帰責性とは「責めに帰すべき事由」の略で、「故意・過失または信義則上これと同視すべき事由」と解釈されています。

これまでは、帰責事由があることが損害賠償請求や契約解除の要件とされていましたが、改正民法によって売主・請負人に「責任がない」となるのがどのような場合か明確にされていないのです。

損害賠償請求に帰責性が必要となったことで、買主側に不利益になるケースが出てくる可能性があります。

例えば、引渡し後に重大な契約不適合が見つかっても、買主と売買契約関係があるのは不動産会社なので、建築の専門家ではないため不動産会社には責任がないと抗弁されることが予測されます。

また、改正民法で新設された救済手段に「追完請求」がありますが、売主・請負人は補修方法や代替方法を提案することもできるようになりました。これによって買主側が不利な安価な方法へ流れやすくなることも懸念されます。

パートナー会社選びは慎重に

契約不適合責任によって、建築士・建築会社の責任が重く明確になりました。地盤調査会社の調査結果に基づく設計であっても、不適合であった場合の責任は建築士・建築会社にあります。地盤調査会社を選ぶ際には、信頼できるかどうか慎重に行う必要があります。