地盤調査をしても、施工後に地盤沈下などのトラブルが起こることがあります。責任は建築士となり訴訟になると損害賠償などが請求されるため、地盤調査会社は慎重に選び、信頼できるデータかどうか十分な確認が必要です。
この記事では、実際の訴訟事例を紹介するので、地盤調査の重要性を再認識してください。
1995年12月に竣工した配送センターの土間コンクリートの一部が、1996年7〜9月までに最大10㎝程度沈下しました。沈下した床には多数のひび割れが発生し、建具に不具合も生じました。
これに対し、設計を担当した建築士に約3,800万円の損害賠償を命じる判決が下されました。
ここで争点となったのは、建築士が軟弱地盤に対応する設計・監理を行ったかどうか。地盤調査では「建物を直接基礎とするのは不適当であり、深さ7.6m以上の強固な砂れき装を支持層として杭基礎を採用すること」と推奨しており、実際には基礎形式に深さ8.15mの杭基礎を採用しています。ただし、杭基礎と地中梁の大部分が建物中央部に設置されておらず、中央部の30㎝使用の範囲では、土間コンクリート床が直接地盤に接していました。
2020年2月5日、分譲マンションの敷地内にある東側の斜面が崩壊し、市道を歩いていた当時18歳の女子高生が土砂に巻き込まれて亡くなりました。
事故原因の現地調査を国土交通省国土技術政策総合研究所が行い、「水による流動・崩壊ではない」と指摘。直接的な原因は不明としながらも、「地表面の低温、凍結、強風の複合的な作用で風化が促進された」と結論づけました。
遺族側はこの調査結果を踏まえ、崩落が起きないように安全性を確保するための斜面管理がなかったとし、マンションの管理会社や区分所有者を業務上過失致死などの疑いで刑事告訴。また総額約1億1,800万円の逸失利益や慰謝料を請求しています。
1995年5月に引き渡されてから6ヶ月後に不具合が発生し、2000年秋頃に地盤の不同沈下が判明しました。これにより基礎立ち上がりや基礎底盤のほぼ全域にわたってクラックが発生。最大傾斜1000分の7の不同沈下が認められました。
建築士は、建築基準法令適合建物を提供する義務を怠ったとする「不法行為責任」を負い、住宅建設会社は瑕疵補修に代わる損害賠償義務を負うことになりました。
建物の構造耐力上の安全を回復するには、建物解体後適切な地盤補強工事を施工した上で再築するほかにないとし、建物の再建築費用3,038万円、代替建物レンタル費用130万円、引っ越し費用30万円、慰謝料100万円、調査鑑定費用150万円、登記費用30万円、弁護士費用350万円の合計3,828万円が相当因果関係のある損害と認められました。
新築したマイホームで、入居後1年ほどした頃からふすまが開きにくくなりました。2階のドアも開きにくく、窓に隙間もあり徐々に拡大しているため、建築業者に修繕を依頼。業者が調整しましたが、その後また開きにくくなり、再度修繕を依頼しました。しかし2度目は修繕に来てくれなかったため、地代の支払いを留保して修繕を促そうとしました。
不払いで裁判となりましたが、ふすまやドアの擦れた跡、窓の隙間などの写真を見た裁判官が「地盤が沈下していないか」とつぶやいたことで地盤を調査。南側が数センチ低くなっていることが判明しました。
裁判の中でスウェーデン式サウンディング試験(地盤強度を調べる方法)を行ったところ、自沈であることがわかり、原因は建築業者が土地にL字鋼を埋め込むために土地を掘削した跡の突き固め不足と土砂の流失と推定されました。
それにより、地盤改良費用と自宅の修繕費用の損害賠償が認められました。
軟弱な地盤であったにも関わらず、適切な地盤改良工事を行わず、基礎に杭も使わずに複数の建売住宅を建ててしまったため、購入後に地盤沈下とともに住宅が傾いてしまいました。
裁判では、地盤が軟弱であることがわかっていながら、十分な対応策が取られていないことから、瑕疵を補修するのに必要かつ相当範囲として、基礎を支える補強工事に必要な費用が損害として認められました。また弁護士費用のほか、慰謝料として100万円を認めた裁判例もあります。
地盤沈下が原因で住宅が傾きはじめた場合、住宅の引渡しから10年の瑕疵担保責任の主張ができることがあります。
京町家を所有していたところ、建物北側に隣接する土地でマンション建築工事の土地掘削工事によって不同沈下したとして、マンション施主及び工事業者に損害賠償を請求しました。
隣地工事による建物の不同沈下は因果関係を立証するのが難しく、請求が認められない場合もありますが、この場合は調査の結果、建築工事との因果関係が認められました。ただし、「不同沈下及び変形を修復する必要がある損害の発生について、その2割に寄与した」と評価されました。
施行会社に対しては、事前に予測できたはずの損傷に対して防止措置を施さなかった点で不法行為責任を負うことになりました。また、マンション施主は軟弱な地盤を掘削すれば周辺土地に影響を及ぼし、隣接する建物に何らかの損傷を生じさせることは容易に認識できたはずとして、施工会社との共同不法行為責任を負うことになります。
大阪府が治水のために平成13〜19年にかけて東大阪市で行った調節池の設置工事により、隣接する土地が沈下し、建物に傾きが生じました。これによって土地所有者が大阪府や施工業者を相手取り、合計約6920万円の損害賠償を請求。大阪地裁は府の設置瑕疵を認め、約1800万円の支払いを命じました。
判決理由は、隣接する土地の一部では平成13年以降、数年間で7センチ程度の沈下が生じており、自然発生的に生じたとは考えにくく、工事に起因すると認定しました。周辺は軟弱地盤なのに、府が沈下防止の十分な措置を講じなかったとして責任を認めた一方で、施工業者の過失や責任は認めませんでした。
原告は5階建てビルを所有しており、店舗及び居宅として使用していました。その隣地に6階建てビルを建築する建築工事の施主と請負業者に対し、工事によって建物自体が傾き、一部にねじれが生じたこと、建物の壁面などにひび割れや亀裂が生じたこと、シャッターや各部屋の扉が閉まらなくなったこと、地下タンクへの漏水、へこみ、水道の使用不可などの被害が発生したこと、工事の騒音・振動のために日常生活と営業活動に被害が生じたとして、両者に対して損害賠償を求めました。
しかしながら、施主に対しては指図について過失がないとして原告の請求を棄却。また請負業者については、隣接建物に構造上の欠陥があることまで想定して傾斜や損傷を防止する措置をとるべき注意義務はないとして過失を否定しました。騒音・振動に対しても受忍限度の範囲内であったとして、損害賠償の請求を棄却しました。
行政からの発注で、請負業者が道路拡幅工事を行った際、道路に隣接した住民が自分の土地の地盤沈下と地上の建物の損傷が生じたとして行政と請負業者に対して損害賠償を求めて訴訟を起こしました。
主な争点は、道路に隣接した土地に地盤沈下が起こったのか、建物損傷が認められるのか、行政や請負業者に過失があるのかという点でした。
行政は工事の前後に測量調査を行っており、地盤沈下がないことを主張。また請負業者は、土地が軟弱地盤であることや建物の老朽化が地盤沈下の主な原因であり、これらを工事施工時点で請負業者が知りうることは不可能として過失がないことを主張しました。
一審判決では、行政及び請負業者の過失を認め、住民の損害賠償請求を一部認めたものの行政と請負業者は控訴。控訴審において現状の地盤や建物の状況を確認するため、さらに測量調査を行ったところ、地盤沈下とは言えないことや過失がないことを主張し、行政及び請負業者の過失責任がないことを認め、一審判決の損害賠償を取り消しました。
紹介したような事例を見ても、地盤沈下による損害賠償が認められているケースは多数あります。地盤調査は手を抜かず、確実に行っておかなければ、いざというとき恐ろしい事態となってしまいます。
訴訟を起こされることがないようにするのが第一ですが、万が一訴訟となっても、事前の地盤調査をしっかり行い対策を講じることで過失責任を問われずにすみます。地盤調査は信頼のおけるパートナー会社を選び、確実に行いましょう。
過去の事例からも明らかなように、地盤調査の重要性は非常に高く、建築プロジェクトにおけるリスクマネジメントの初歩と言えます。
地盤調査は建築基準法に則り行われるため、専門家の存在は不可欠。当サイトでは、四国地方の地盤調査会社の中から地質調査技士を擁し、無料見積もりを提供するサービスの質の高を基準に選定し紹介しています。地盤調査を検討されている方は参考にしてみてください。
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