近年、建物を建築する際に事前に行われる「地盤調査」への目線が厳しくなっています。
四国の地盤調査会社が調査において不正なデータを提供した事件や、東京都で工事が原因で住宅地の地盤が緩んでしまった事件が大々的に報道されたことなどが影響しています。
ずさんな地盤調査にもとづいて建物を設計すると、建築士にも責任が発生する可能性があります。品質確保促進法により、新築建物の瑕疵担保責任は10年に延長されているので建築士としても注意しなければなりません。
今回は品質確保促進法とはどういった法律なのか、建築士としてどのような点に注意すべきかお伝えします。
【元弁護士・ライター】 保有資格:司法試験合格、簿記2級
京大法学部在学中に司法試験に合格。10年にわたる弁護士実務経験とライティングスキルを活かして不動産メディアや法律メディアで精力的に執筆中。不動産については売買、賃貸、契約違反、任意売却、投資、離婚、相続、解体や許認可等、あらゆる分野に精通している。弁護士からの信頼も厚く多くの法律事務所サイトの記事も手掛けており、監修案件も多数。You Tubeによる法律情報の発信や弁護士志望者のサポート活動も行っている。
品質確保促進法とは、住宅に関するトラブルを防ぎ、トラブルが発生した際には消費者保護を重視して早めに解決できるようにとりはからう法律です。
正式名称は「住宅の品質確保の促進に関する法律」であり「住宅品確法」や「品確法」ともよばれます。
新築住宅において性能に著しく大きな問題があったり購入者の生活に支障をきたすような欠陥があったりすると、消費者の利益が害されてしまいます。
そこで消費者を守るためにトラブルを未然に防いで解決するのが品質確保促進法の目的です。 施行されたのは平成12年4月なので、すでに有効となってさまざまな事例に適用されています。
品質確保促進法は、主に以下のような内容を規定しています。
1つ目は住宅性能表示制度です。
「登録住宅性能評価機関」が対象住宅を一定基準にあてはめて性能評価し、「住宅性能評価書」を作成します。これにより、消費者が家を購入する際に対象住宅がどの程度の性能を有するのか把握できます。
住宅の性能については構造耐力や遮音性、省エネルギーなどの10項目が数値や等級で表現されます。
2つ目に、裁判外の紛争処理体制(ADR)を整備し、消費者と事業者においてトラブルが発生した場合、円滑に紛争を解決できるように取り計らいます。
消費者はADRで相談をしたりADRに間に入ってもらって紛争解決のサポートを受けたりできます。
3つ目は、瑕疵担保責任の特例です。
新築住宅の売買や建設請負契約が締結されたとき、品質確保促進法の規定により、一定の欠陥があると瑕疵担保適任(現在は契約不適合責任)の期間が10年間に延長されます。特約があると期間は20年まで延長可能です。
具体的には以下の2つの場合に瑕疵担保責任の延長が適用されます。
【柱や梁など住宅の構造上主要な部分の欠陥】
基礎、基礎ぐい、壁、柱、小屋組、土台、斜材(筋かい、方づえ、火打材等)、床版、屋根版又は横架材(はり、けた等)で、住宅の自重もしくは積載荷重、積雪、風圧、土圧もしくは水圧又は地震その他の震動もしくは衝撃を支えるもの
【雨水浸入を防止する部分の欠陥】
屋根もしくは外壁又はこれらの開口部に設ける戸、わくその他の建具
雨水を排除するために設ける排水管のうち、屋根もしくは外壁の内部又は屋内にある部分
地盤調査がずさんな場合、建物に欠陥が生じてしまう可能性が高く、品質確保促進法によって売主や請負人に責任が生じるケースも少なくないでしょう。
設計図面を作成した建築士にとっても他人事ではありません。
建築士自身が売主や請負人として契約すると、消費者から瑕疵担保責任を追及される可能性もあります。
自分が直接関わらない場合でも、不法行為責任を問われる可能性は高いといえるでしょう。
「地盤調査が不適切であると知らなかった」という弁解は通用しません。建築士は建築に関する専門家として、地盤調査の結果についても責任を負うべきと考えられるからです。
地盤調査会社が勝手にデータ改ざんなどの不正行為を行っても建築士にリスクが発生するので、適切に地盤調査が行われるように注意を尽くさねばなりません。
建築の基盤となる地盤調査が適切に行われるには、良質な地盤調査会社を選定する必要があります。
四国では、とある地盤調査会社がデータ改ざんの不正行為を行ったために地盤調査が不適切となり、大きな問題が引き起こされた事件も起こっています。
そういった悪質な業者に依頼してしまうと、建築士にも責任が発生するという高いリスクが発生するのです。
良質な地盤調査会社を選ぶ際には以下のような点に注目しましょう。
当サイトでは良質な地盤調査会社を集めてご紹介しています。迷われたときにはお気軽にご利用ください。
これらの会社は、地質調査技士を擁し、無料見積もりを提供するサービスの質の高を基準に選定しています。
地盤調査は建築基準法に則り行われるため、専門家の存在は不可欠。適切な地盤調査により、将来発生するかもしれないリスクを未然に防ぎ、トラブルのない建築計画を立てましょう。
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