地盤調査とデータ改ざん

建築士が設計図を作成する際には、先に地盤調査会社へ調査依頼するのが一般的です。
調査会社がデータ改ざんをしたら、建築士には正確な情報が伝わりません。間違った情報にもとづいて法令違反の設計図を作成すると、建築士も責任を問われる可能性が濃厚となります。

2021年8月、四国の地盤調査会社が大々的に測定結果のデータ改ざんを行っていた事実が発覚し、業界を揺るがす大問題となっています。

今回は地盤調査でデータ改ざんされた四国の事件の概要や安全性の高い地盤調査会社の選び方をご説明します。

引用元:https://tochikatsunavi.com/amamori-ie-baikyaku2/

福谷陽子

【元弁護士・ライター】 保有資格:司法試験合格、簿記2級

京大法学部在学中に司法試験に合格。10年にわたる弁護士実務経験とライティングスキルを活かして不動産メディアや法律メディアで精力的に執筆中。不動産については売買、賃貸、契約違反、任意売却、投資、離婚、相続、解体や許認可等、あらゆる分野に精通している。弁護士からの信頼も厚く多くの法律事務所サイトの記事も手掛けており、監修案件も多数。You Tubeによる法律情報の発信や弁護士志望者のサポート活動も行っている。

地盤調査のデータ改ざん!事件の概要

2021年8月、住宅の地盤調査や地盤改良工事業を営む「ハイスピードコーポレーション社(愛媛県松山市)」が、地盤調査報告書のデータ改ざんをしていた事実が明らかになりました。

8月25日時点で公表されたときには「データ改ざんの件数は33件」とされていましたが、その後9月6日になると「判明している分だけで76件」と修正されました。

データ改ざんの内訳

ハイスピードコーポレーション社によると、76件のデータ改ざんが行われた場所は愛媛県が65件、高知県が10件、香川県が1件となっており、同社が愛媛県の企業であることから四国へ集中しています。
また上記76件はすべて1人の社員が行ったとされ、データ改ざんの理由については「作業を省略したかった」ものと説明されています。

データ改ざんの手口

ハイスピードコーポレーション社のデータ改ざんはどのようにして行われたのでしょうか?
不正を行った元従業員によると、以下のとおりです。

地盤調査報告書の作成ソフトにSWS試験機を使って計測したデータを読み込ませる際、ソフトの修正機能を使って加工。データが不足する箇所に対し、現場の別地点のデータや隣接地におけるデータなどを付け足すことで、基準をクリアする内容に変更していました。

地盤調査報告書作成ソフトにはいろいろな種類がありますが、その多くにデータ修正機能がついています。その気になれば簡単に今回と同様のデータ改ざんができてしまうといえるでしょう。

一方、でき上がった報告書を見ても不正を見抜くのは簡単ではありません。本物に似たデータが他の地点から流用されているので、柱状図を見るだけでは改ざんを見抜きにくいのです。

地盤調査会社が提出した報告書に不正があっても、建築士がデータ改ざんに気づかず設計図を作成してしまうリスクが十分にあります。

行政による調査

今回の地盤調査データ改ざん事件を受けて、愛媛、高知、香川の3県はハイスピードコーポレーション社への調査を開始しています。

  • ハイスピードコーポレーション社が関係する住宅について、建築基準法に違反していないか確認
  • 今回明らかになった以外にも不正行為が行われていないか確認

建築士にも責任が発生するリスク

今回のデータ改ざん事件に関し、愛媛県は「建築士にも責任がある」と考えています。
建築士には「建築基準法へ適合しているかどうかを確認すべき義務」があるからです。
漫然と改ざんされた報告書を信用して法令違反の設計図を作成すると、建築士が行政指導を受けたり法的な責任を追及されたりするリスクが発生します。

現に愛知県はハイスピードコーポレーション社に地盤調査を依頼した建築士に対し、提出された報告書の確認や提出を求める方針と発表しました。

場合によっては今後、建築士が住居の購入者や施工主から損害賠償請求をされる可能性もあるでしょう。建築士自身がデータ改ざんしていなくても、依頼先が不正を行うと建築士も責任を問われるリスクが発生します。

地盤調査会社のデータ改ざんは、建築士にとって決して他人事ではありません。

優良な地盤調査会社の選び方

建築士が安全に仕事をするには、優良な地盤調査会社を選定する必要があります。
以下でどういった会社を選べばよいのか、ポイントをみてみましょう。

実績が豊富

まず、これまでの地盤調査に関する実績が豊富で創業からの期間が長い会社を選びましょう。会社が長期間存続しているなら、その間に信頼を積み重ねているはずです。
今までの実績が高ければ、いい加減な仕事はしない会社と考えられるでしょう。
依頼前に創業年や現在までの地盤調査に関する実績を確認してみるようおすすめします。

地盤保証がついている

地盤調査には「保証」をつけられます。
今回のハイスピードコーポレーション社によるデータ改ざんにも保証が適用され、救済される事例が少なくありません。
保証があれば購入者や施工主から損害賠償されるリスクを大きく軽減できるでしょう。
積極的に地盤保証を導入している会社を選ぶと安心感があります。

建築士が安全に仕事を進める上で、信頼できる地盤調査会社の選定は必須です。
当サイトには四国の優良な地盤調査会社が多数登録していますので、ぜひご活用ください。