擁壁における地盤調査とは?

「擁壁」とは壁状の構造物で、地盤や崖を崩壊させないために必要です。擁壁の建設には、その下にある地盤の状態を把握することが欠かせません。この記事では、擁壁の地盤調査を行う目的、地盤調査の注意点、効果的な地盤調査方法について解説します。

擁壁の地盤調査を行う目的

擁壁の地盤調査を行う目的として、次の3つが挙げられます。

  • 地盤沈下のリスクを避けるため
  • 擁壁の健全性の確認
  • 費用と安全性のバランスを図るため

順番に見ていきましょう。

地盤沈下のリスクを避けるため

擁壁の建設は、地盤が安定していなければできません。地盤が緩い場所に擁壁を設置すると、擁壁自体が沈下し、機能を失う恐れがあります。地盤が不安定であれば、地盤改良が必要になるため、擁壁工事前に地盤調査を実施する必要があるのです。

擁壁の健全性の確認

擁壁の構造や現状、劣化の程度を把握し、支持地盤や背面地盤の安定性を解析することで、擁壁の健全性を評価できます。これにより、倒壊の危険性がある擁壁を事前に特定し、適切な対策が可能です。

費用と安全性のバランスを図るため

擁壁工事の費用計画を立てる際にも、地盤調査は不可欠と言えます。地盤が弱い場合は追加の盛土工事が必要になることもあり、そのためには正確な資金計画が必要です。擁壁の大きさだけではなく、地盤の状態を考慮した総合的な計画が重要でしょう。

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擁壁の地盤調査を行う際の注意点

埋め戻し土の沈下に注意

擁壁工事においては、埋め戻し土の管理が重要です。掘削後に行われる埋め戻しは、十分な転圧処理を施しても、元の地盤と異なる沈下特性を示し、不均一な沈下を引き起こす可能性があるのです。時間の経過と共に雨水の影響で沈下しやすくなり、地割れや不同沈下のリスクを高めるでしょう。

擁壁を支える地盤の支持力の確認

擁壁を支える地盤の地耐力は、擁壁の安定性を保つ要素。地耐力が不十分な場合、擁壁はその機能を果たせなくなります。そのため、地盤調査は、擁壁が設置されていてもその地盤の状況を正確に把握する必要があります。

擁壁と自然斜面の関係

石積み擁壁の上に自然斜面が残っている場合、擁壁の高さを低く抑えるための手法である可能性がありますが、安定性に欠けるため注意が必要です。

擁壁の目地部分の確認

擁壁の目地部分、つまり擁壁同士が隣接する部分で面が揃っていない場合、擁壁が動いている兆候があると判断できます。また、擁壁の縦壁の上部が一直線に揃っていない場合は、造成地全体が沈下している可能性があるでしょう。

擁壁に向いている地盤調査の方法

擁壁の建設に適した地盤を確認するためには、特定の地盤調査方法が推奨されます。

平板載荷試験は、精密な地耐力測定を提供しますが、高額で時間を要する方法です。一方で、スウェーデン式サウンディング試験は簡易的で機動性に長けており、費用も安価ですが、地耐力測定の範囲が120KN/m2までと限定的。

簡易載荷試験(エレフット)は、平板載荷試験の簡易版として開発され、試験時間が短く、機動力に優れています。測定できる支持力度は4375kN/m2までと高いため、宅地の擁壁に適した地盤調査方法です。

擁壁工事における地盤調査を選択する際は、擁壁の荷重と地盤の条件を考慮し、これらの方法の中から適切なものを選定しましょう。

まとめ

擁壁の地盤調査は、地盤沈下を避け擁壁の健全性を保証し、費用と安全性のバランスを図るために必要です。調査時には埋め戻し土の沈下、地盤の地耐力、自然斜面と擁壁の関係、目地部分の状態に注意してください。

実際に地盤調査を検討している場合は、地盤調査方法の知識も把握しておきましょう。