日本では地震が多く、液状化しやすい弱い地盤のエリアに建物を建築すると地盤沈下が起こる可能性があります。
地盤調査の際、販売会社や仲介業者などは液状化についてきちんと調べて買主に報告しなければなりません。報告を怠ったために販売会社や仲介会社、建築会社などが訴えられたケースもあります。
この記事では地震の際の液状化リスクや地耐力について説明しなかった場合の責任について解説します。
地盤調査会社や不動産会社、建築士などの関係者の方はぜひ参考にしてみてください。
【元弁護士・ライター】 保有資格:司法試験合格、簿記2級
京大法学部在学中に司法試験に合格。10年にわたる弁護士実務経験とライティングスキルを活かして不動産メディアや法律メディアで精力的に執筆中。不動産については売買、賃貸、契約違反、任意売却、投資、離婚、相続、解体や許認可等、あらゆる分野に精通している。弁護士からの信頼も厚く多くの法律事務所サイトの記事も手掛けており、監修案件も多数。You Tubeによる法律情報の発信や弁護士志望者のサポート活動も行っている。
日本は非常に地震の多い国です。国土交通省気象庁の発表によると、毎年震度5以上の地震が発生している状況です。震度4以下の地震も含めると、2020年3月1日~2021年3月6日の間に地震が約470件も起こっているのです。(※1)
UNDP(国連開発計画)が実施した1980年~2000年にかけての国別地震頻度調査では、日本は世界で4番目に地震の多い地震大国となっています(参考・1位中国、2位インドネシア、3位イラン)。(※2)
大規模な地震が発生すると、軟弱地盤の沈下やがけ崩れなどが起こりやすくなります。
日本で建物を建築する際には地盤の地耐力に関する調査が不可欠といえるでしょう。
住宅販売会社や建築会社、仲介業者などに地盤の強さについて説明義務があるのでしょうか?
実際、法的に説明義務が肯定される可能性が十分にあるので関係各社は十分に注意が必要です。
不動産の販売会社や仲介業者は不動産の買主に当該不動産についての十分な情報を提供しなければなりません。
地盤が液状化しやすいといった地耐力の問題は買主にとって非常に重要な要素です。
それにもかかわらず説明を怠ると、販売会社や仲介業者の説明義務違反となる可能性があります。
不動産仲介業者の説明義務については、宅地建物取引業法に定められています。確かに地耐力について説明しなければならないとは明示されていませんが、宅地建物取引業で明示されている事項は「例示」であり、すべてではありません。宅地建物取引業法に書かれていない事項でも、買主にとって重要な事実は説明しなければならないのです。
地盤の強さも重要事項なので、もしも説明を怠ったら買主から損害賠償請求をされる可能性があります。
地盤についての報告を怠ると、契約不適合責任を追及される可能性もあります。
契約不適合責任とは、契約の目的物が契約目的に合致していないときに売主や請負業者に生じる責任です。簡単に液状化してしまうような地盤に建てられた建物は、買主にとって契約内容に適合したものとはいいにくいでしょう。
きちんと説明が果たされて納得して購入した場合ならともかく、説明が行われずに知らずに購入して後から地盤沈下が起こった場合などには、買主が契約不適合責任を追及して大きなトラブルになる可能性があります。
軟弱地盤かどうかを確認するには、地盤調査が必須です。
地盤調査によって安全な地盤であることが確認されたなら、訴訟リスクを避けて安全に建物を建築することができます。
地盤調査を行うのは通常、地盤調査会社です。
建築会社や販売会社などがトラブルを避けるには、地盤調査会社に依頼して適切な方法で地盤調査を行う必要があるといえるでしょう。
すべての地盤調査会社が適切な方法で地盤調査を行うとは限りません。
中にはデータの改ざんや虚偽報告などの不正をはたらく業者もあります。
そのような業者に地盤調査を依頼して液状化リスクが見過ごされると、建築会社や販売会社、仲介業者などに法的責任が生じる可能性があるので注意が必要です。
また地盤調査会社の不正な報告書にもとづいて建築士が設計図を作成し、その設計図にもとづいて危険な建物が建築された場合、建築士にも責任が及ぶ可能性があります。
液状化しやすい土地の地盤調査でも、信頼できる地盤調査会社を選ばなければ関係各社が責任を問われる事態になりかねないことを知っておきましょう。
現実に、2021年に四国のハイスピードコーポレーションという会社がデータ改ざんの不正を行って地盤調査報告書を作成し、それにもとづいて建物が建築されたため、発注企業からのリプレースが多々起きている、という市場の状況もあります。
建築士や不動産関連会社としては、不正を行わない信頼できる地盤調査会社に液状化リスクを含めた地盤調査の依頼をすべきといえるでしょう。
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