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大和ランテックの地盤調査報告書における不適切行為とは?

2026年7月24日、大和ハウス工業は、子会社である大和ランテックが受託した地盤調査業務において、調査報告書の作成時に調査データの加工や他現場の調査データの転用などの不適切行為が行われていたことを公表しました。

公表時点では、大和ランテック東日本支社北日本営業所で2012年10月から2025年3月までの間に、少なくとも4名の担当者によって816件の地盤調査報告書が不適切に作成・提出されていたことが確認されています。

地盤調査の結果は、建物の基礎設計や地盤改良の要否を判断する重要な資料です。今回の事例は、現場で調査を実施するだけでなく、取得した原データをどのように管理し、誰が報告書を作成・確認するのかという管理体制の重要性を考える事例といえます。

ここでは、大和ハウス工業が公表した資料をもとに、不適切行為の内容や発覚した経緯、対象件数、安全性の確認状況、外部調査委員会の設置状況について整理します。

※本記事は2026年8月20日時点で公表されている情報をもとに作成しています。外部調査委員会による調査が継続しているため、今後の調査によって対象件数や事実関係などが変更される可能性があります。

大和ランテックで判明した不適切行為の概要

大和ハウス工業の公表によると、大和ランテック東日本支社北日本営業所で受託した地盤調査業務において、地盤調査報告書を作成する際に不適切な処理が行われていました。

項目 公表内容
公表日 2026年7月24日
対象会社 大和ランテック株式会社
対象拠点 東日本支社 北日本営業所
不適切行為が確認された期間 2012年10月~2025年3月
不適切に作成・提出された報告書 816件
確認された担当者 少なくとも4名
主な内容 SWS試験データやボーリング柱状図の加工、室内試験における他現場データの転用など
今後の対応 外部調査委員会による全容解明・原因分析・再発防止策の検討など

大和ランテックは、北日本営業所で2012年10月から2025年6月までに受託した4,681件の地盤調査業務を調査し、そのうち816件で不適切に作成・提出された報告書を確認しています。

一方、北日本営業所以外については、2024年4月から2025年6月までに受託した2,757件を対象に調査した範囲では、不適切な行為は確認されていないと公表されています。

どのような不適切行為が行われていた?

今回公表された不適切行為は、ひとつの試験やデータだけに限られていません。SWS試験やボーリング調査、室内土質試験など、地盤の状態を判断するための複数の資料で不適切な処理が確認されています。

スクリューウエイト貫入試験のデータ加工

スクリューウエイト貫入試験(SWS試験)は、先端にスクリューポイントを取り付けたロッドを地中に貫入させ、荷重や回転数から地盤の硬さや締まり具合を確認する試験です。

戸建住宅などの地盤調査で用いられることが多く、基礎設計や地盤改良の要否を検討するための判断材料となります。

今回の公表では、このSWS試験の試験データを加工する行為が確認されたとされています。

スクリューウエイト貫入試験について詳しく見る

ボーリング柱状図の加工

ボーリング柱状図は、ボーリング調査によって確認した地層や土質、深度、N値などを記録した資料です。地中の状態を把握し、建物を支えるための基礎や杭、地盤改良などを検討する際に活用されます。

大和ハウス工業の公表では、ボーリング柱状図についても加工する行為が行われていたとされています。

標準貫入(ボーリング)試験について詳しく見る

室内試験で他現場のデータを転用

地盤調査では、現場で行う試験だけでなく、採取した土を使って室内試験を行うことがあります。

今回の公表では、地盤の強さを確認する力学試験、土を構成する粒子の割合を調べる粒度試験、土や岩盤の水の通しやすさを調べる透水試験などについて、他現場の試験データを転用する行為が確認されています。

地盤の状態は土地によって異なるため、別の現場で取得したデータは、その土地そのものの調査結果とはいえません。報告書を見る際には、数値だけでなく、そのデータがどの現場で、どのような試験によって取得されたものなのかを管理できる体制が重要です。

地盤調査における粒度試験について詳しく見る

不適切行為は報告書を作成する過程で行われた

今回の事例で注目したいのが、現場で地盤調査を実施した段階と、顧客へ提出する地盤調査報告書を作成する段階が分かれていた点です。

大和ランテックは、受託した地盤調査業務を一部を除いて再委託していました。公表資料によると、今回の不適切行為は、再委託先から大和ランテックへ提出された調査データをもとに、顧客向けの地盤調査報告書を作成する際に行われたとされています。

つまり、地盤調査を発注する際には、現場で実際に調査を行う会社だけを見るのではなく、調査後のデータを誰が受け取り、誰が報告書を作成し、誰が最終確認するのかについても確認することが重要です。

不適切行為はどのように発覚した?

今回の事案は、施工中の物件で発生した外構路盤の沈下をきっかけに明らかになりました。

大和ランテックは、2024年9月と2025年3月に地盤調査報告書を委託者へ提出していました。その報告書に基づいて施工していた物件で外構路盤の沈下が発生したため、委託者が別の会社へ地盤調査を再依頼しました。

その結果、再調査で作成された地盤調査報告書と、大和ランテックが提出していた報告書の内容に差異が確認され、2025年7月に委託者から大和ランテックへ照会が行われました。

大和ランテックが社内確認を進めたところ、当該物件の担当者が地盤調査報告書を不適切に作成・提出していたことが判明しました。その後、他の案件についても調査した結果、北日本営業所で受託した複数の物件でも不適切な処理が確認されています。

今回の発覚経緯からも、調査結果と実際の現場状況に違和感がある場合には、元の調査データを確認したり、必要に応じて別の専門会社に意見を求めたりすることが問題発見につながる場合があります。

地盤セカンドオピニオンについて詳しく見る

816件の地盤調査報告書で不適切な作成・提出を確認

大和ランテックが北日本営業所で受託した4,681件の地盤調査業務を調査したところ、2012年10月から2025年3月までの間に、少なくとも4名の担当者によって816件の地盤調査報告書が不適切に作成・提出されていたことが確認されています。

2026年7月24日時点で公表されている地域別の内訳は次の通りです。

地域 件数
北海道 24件
青森県 81件
岩手県 139件
宮城県 344件
秋田県 22件
山形県 35件
福島県 170件
茨城県 1件
合計 816件

宮城県の344件が最も多く、次いで福島県170件、岩手県139件となっています。

ただし、これらは2026年7月24日時点で判明している件数です。大和ハウス工業は、今後の調査によって内容が変更となる可能性があるとしています。

対象となった建物の安全性はどう確認されている?

「816件の地盤調査報告書で不適切な作成・提出が確認された」という事実だけを見ると、対象となった建物すべてに安全上の問題があるように感じるかもしれません。しかし、公表内容では、安全性についても別途確認が進められています。

816件のうち、不適切に作成された地盤調査報告書をもとに大和ハウス工業またはグループ会社が設計・建設した建物や工作物は581件です。

大和ハウス工業は2026年7月24日の公表時点で、地盤の再調査が必要な19件を除き、安全性に問題がないことを確認したとしています。

安全性を確認できた背景には、当時の地盤調査データの多くが大和ランテック内に保管されていたことがあります。保管されていた原データをもとに構造計算を改めて行うなどして、設計への影響を確認しています。

なお、19件という件数は2026年7月21日時点の数字です。また、再調査が必要であること自体が、直ちに建物の安全性に問題があることを意味するものではありません。

第三者機関による検証も進められている

安全性の確認については、大和ハウスグループだけで完結させるのではなく、指定確認検査機関でもあるハウスプラス住宅保証株式会社一級建築士事務所へ、計算過程の検証を依頼しています。

2026年7月24日時点では581件すべての第三者検証は完了していませんが、検証を終えた物件については、大和ハウスグループが行った安全性確認結果は妥当との見解を得ていると公表されています。

また、大和ハウスグループ以外の委託者から大和ランテックが受託していた110件についても、それぞれの委託者に安全性の検証を進めるよう依頼しています。

大和ハウス工業・大和ランテックはどのような対応を行っている?

大和ハウス工業は、本事案の判明後に「大和ランテック地盤調査問題対策本部」を立ち上げ、顧客対応や対象物件の調査、安全性確認などを進めています。

対象となった顧客への個別連絡

大和ランテックへ地盤調査を委託し、今回の事案の対象であることが判明した顧客や、大和ハウスグループが建設した対象物件の建築主などに対して、個別に連絡し、順次説明を行っているとしています。

国土交通省など監督官庁へ報告

本事案については、国土交通省、近畿地方整備局のほか、対象物件が所在する各特定行政庁へ報告し、指導を受けながら対応を進めていると公表されています。

外部の専門機関と連携して調査

対象物件の特定などについて第三者性を確保するため、不正調査を専門とするコンサルティング会社にも調査を委託しています。

また、建物の安全性確認についても第三者機関へ検証を依頼することで、自社のみの判断とならないよう対応が進められています。

外部調査委員会を設置し原因や再発防止策を調査

大和ハウス工業は2026年7月9日の取締役会で、「大和ランテック地盤調査問題外部調査委員会」の設置を決議しました。

外部調査委員会は弁護士1名と地盤工学などの専門家2名で構成され、いずれも大和ハウス工業・大和ランテックとの利害関係はないとされています。

委員会では、主に以下の内容について調査・検証が行われます。

  • 不適切行為を行った担当者や対象物件の特定
  • 不適切行為が発生した経緯
  • 長期間にわたって問題が顕在化しなかった理由
  • 担当者個人だけでなく組織的な背景・原因
  • 大和ハウスグループのガバナンス上の問題
  • 再発防止に向けた体制・制度・運用面の改善策
  • 建物・工作物の安全性確認プロセスと結果の妥当性

外部調査委員会の調査完了は2026年12月を予定

大和ハウス工業は、外部調査委員会による調査について2026年12月の完了を予定しています。

そのため、2026年8月20日時点では、「なぜ不適切行為が長期間続いたのか」「組織的にどのような問題があったのか」「具体的にどのような再発防止策が必要なのか」といった点について、最終的な結論は出ていません。

外部調査委員会による調査報告書が公表された場合は、その内容を確認したうえで評価する必要があります。

今回の事例から考える地盤調査データ管理の重要性

今回の事例は、地盤調査そのものだけでなく、調査後のデータ管理や報告書作成のプロセスについても確認する必要性を示しています。

報告書だけでなく原データを保管する

今回、大和ハウスグループが対象物件の安全性を改めて確認できた理由のひとつとして、当時の地盤調査データの多くが大和ランテック内に保管されていたことが挙げられます。

報告書の内容に疑問が生じた場合でも、元になった調査データが保管されていれば、数値を照合したり、改めて構造計算を行ったりすることができます。

地盤調査を依頼する際は、報告書を発行してもらうだけでなく、原データをどのように保存・管理している会社なのかを確認することも重要です。

地盤調査データの保管・改ざん防止策について詳しく見る

誰が調査し、誰が報告書を作成するのか確認する

地盤調査では、契約した会社が現地調査から報告書作成までをすべて直接行うとは限りません。

今回の事例でも、地盤調査業務の一部を除いて再委託が行われており、再委託先から提出されたデータをもとに大和ランテックが顧客向け報告書を作成する過程で不適切な処理が行われたとされています。

発注者としては、「どの会社と契約するか」だけでなく、「実際に現地調査を行うのは誰か」「誰が報告書を作成するのか」「最終的に誰が内容を確認・承認するのか」まで把握しておくことが重要です。

違和感がある場合は再調査や第三者確認も検討する

今回の事案は、施工中に外構路盤の沈下が発生し、委託者が他社へ地盤調査を再依頼したことが発覚のきっかけとなりました。

地盤調査結果と実際の現場状況が合わない、報告書の数値について十分な説明が得られないなどの疑問がある場合は、まず調査会社へ根拠や原データの説明を求めましょう。

それでも疑問が解消しない場合には、必要に応じて地盤調査のセカンドオピニオンや再調査を検討することも選択肢となります。

地盤調査の再調査が必要になるケースについて詳しく見る

地盤調査を依頼するときに確認したいポイント

発注者が地盤調査会社の内部業務をすべて把握し、不適切な行為を事前に完全に見抜くことは困難です。しかし、依頼前にデータ管理や確認体制について質問することで、会社選びの判断材料を増やすことはできます。

地盤調査を依頼する際には、以下のような点を確認しておきましょう。

  • 現地で地盤調査を実施する会社はどこか
  • 地盤調査業務を下請け・再委託することがあるか
  • 再委託する場合、その会社をどのように管理しているか
  • 現地で取得した原データを保存しているか
  • 調査日時や調査地点を確認できる記録が残されるか
  • 原データから報告書を作成する際の確認体制があるか
  • 報告書を作成した担当者とは別の担当者がチェックしているか
  • データを修正した場合に履歴が残る仕組みがあるか
  • 第三者による検証やチェックを受けられる仕組みがあるか
  • 調査範囲や成果物、責任範囲が契約書に明記されているか

価格や会社の規模だけで判断せず、調査から報告書作成、データ保存までの流れを説明できる会社かどうかを確認することが、責任トラブルを防ぐためのポイントです。

まとめ|地盤調査は報告書だけでなく管理プロセスも確認しよう

大和ランテックの地盤調査報告書を巡る事案では、2026年7月24日時点で、少なくとも4名の担当者によって816件の地盤調査報告書が不適切に作成・提出されていたことが公表されています。

一方で、816件すべての建物に安全上の問題が確認されているわけではありません。大和ハウスグループが設計・建設した581件については、再調査が必要な19件を除いて安全性に問題がないことを確認したとされ、第三者機関による検証も進められています。

また、原因や組織的な背景、再発防止策については外部調査委員会が調査中であり、現時点で断定することはできません。

今回の事例から発注者が考えたいのは、「地盤調査を実施して報告書を受け取れば安心」と考えるのではなく、その報告書がどのデータをもとに作られ、誰が確認し、原データがどのように保管されているのかまで確認することです。

地盤調査会社を選ぶ際は、価格や知名度だけではなく、調査体制、再委託の有無、データ管理、報告書のチェック体制、問題が起きた際の責任範囲なども確認したうえで依頼先を検討しましょう。

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