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南海トラフの液状化対策|四国で必須の地盤調査

四国での住宅・施設計画では、南海トラフ地震にどう備えるかが避けて通れないテーマです。とくに液状化は、揺れが収まった後にも建物の沈下や傾きを引き起こすため、建築士や工務店にとって発注前の判断が問われます。

本記事では、南海トラフ地震で四国が受ける液状化リスクを整理し、地域ごとの特徴と、地盤調査で押さえておきたい項目を解説します。

このページで分かること

  • 南海トラフ地震による四国4県の液状化リスクと被害想定の状況
  • 液状化リスクを的確に把握するための「調査項目の適切な組み合わせ」
  • 設計・発注前に元請け(建築士・工務店)が確認すべき3つのチェックポイント
  • 地盤保証における液状化(天災)の免責範囲と対応策

南海トラフ地震が四国にもたらす液状化リスク

内閣府の被害想定(南海トラフ巨大地震の被害想定 第一次報告)によれば、四国では瀬戸内海沿岸や徳島県沿岸部を中心に、液状化の発生可能性が大きい地域が広がっているとされています。また、内閣府「南海トラフの巨大地震モデル検討会(第二次報告)」に基づく資料では、徳島県東部や瀬戸内海沿岸、高知平野などの沿岸平野部に加え、吉野川・四万十川といった河川沿いでも、強い揺れに伴う液状化・地盤沈下が四国全域で発生すると想定されています。

液状化現象は、地下水位が高く緩く堆積した砂層に対して強い揺れが加わることで発生します。四国では、旧河道や氾濫平野、埋立地・干拓地、過去に池や水路を埋め立てた宅地などが、液状化の起こりやすい典型的な地形として挙げられます。

四国4県では、被害想定やハザード情報の公開状況にそれぞれ特色があります。計画を立てる際は、まず建築予定地が属する県や市町村の公開情報を確認することが大切です。

  • 徳島県:県内を250mメッシュに区分し、PL値により「極めて高い」「高い」「低い」「かなり低い」の4段階で液状化危険度を分類した分布図が公開されています。
  • 高知県:県の被害想定(令和8年3月公表)では、最大クラスの地震発生時に液状化により約2,900棟の建物が全壊すると想定されています。香南市など一部の市町村では独自に液状化マップを作成・公開しており、沿岸部の低地を中心にリスクの高い区域が示されています。
  • 香川県:県の被害想定(令和7年9月公表)では、液状化により県内で約3,800棟の建物が全壊すると推計されています。液状化の発生可能性がある地域は県土の24.6%に及びます。
  • 愛媛県:県独自に南海トラフ巨大地震などを対象とした地震被害想定調査を実施しており、震度分布とあわせて液状化危険度の推計結果を公表しています。
※参照元:四国地方整備局・四国の港湾における地震・津波対策検討会「南海トラフ地震に対応した四国の広域的な海上輸送の継続計画」(内閣府 南海トラフ巨大地震の被害想定 第一次報告を引用)(https://www.pa.skr.mlit.go.jp/general/image/policy/jisintunami/base/keikaku_kai_main.pdf
※参照元:四国地方整備局「南海トラフ地震・津波に伴う長期浸水対策の取り組みについて」(内閣府 南海トラフの巨大地震モデル検討会 第二次報告を引用)(https://www.skr.mlit.go.jp/kikaku/kenkyu/r5/ronbun/I-1.pdf
※参照元:徳島県オープンデータ 南海トラフ巨大地震による液状化危険度分布図(https://opendata.pref.tokushima.lg.jp/dataset/1177.html
※参照元:高知県/令和7年度〔高知県版〕南海トラフ地震による最大クラスの被害想定の概要(https://www.pref.kochi.lg.jp/doc/2026030300345/
※参照元:香川県/香川県地震・津波被害想定第二次公表説明資料(令和7年9月2日公表)(https://www.pref.kagawa.lg.jp/documents/55659/gaiyou.pdf
※参照元:愛媛県 地震被害想定調査結果について(https://www.pref.ehime.jp/page/135020.html

液状化リスクを見抜く調査項目の組み合わせ

液状化の判定においては、標準的な地盤調査だけでは情報が不足する場合があります。液状化しやすい地形に建物を建築する際は、以下のように調査方法を組み合わせることが推奨されます。

【住宅】SWS試験+補足サンプリング

住宅の一次調査として広く用いられるSWS(スクリューウエイト貫入試験)単独では、砂層の粒度や正確な地下水位を把握しきれません。そのため液状化想定エリアでは、SWS試験に加えて簡易サンプリングや地下水位の実測を実施し、砂層の性状と地下水条件を把握する手法が一般的です。

【中〜大規模】標準貫入試験と粒度試験

中〜大規模建物や埋立地では、標準貫入試験でN値と土質を把握し、粒度試験で液状化しやすい細砂層かどうかを判定します。四国の埋立地や旧河道では、地表付近から比較的深い位置まで緩い砂層が分布しているケースもみられるため、粒度試験まで実施しないと精度が落ちる可能性があります。

【大規模・重要施設】PS検層や表面波探査で剛性を確認

PS検層や表面波探査は、地盤のせん断波速度(Vs)を測定し、液状化に対する抵抗力を推定するうえで有効な手法。一般的な宅地規模では省略されることもありますが、複数棟の分譲地や商業施設の開発においては、投資対効果に見合う選択肢となります。

過去に四国で発生した液状化被害の実例

四国地方では、1946年(昭和21年)に発生した昭和南海地震の際、沿岸部を中心として液状化が起こった記録が残されています。今後の想定を組み立てるうえで参考となる、公的機関や報道機関の資料からいくつかの実例をご紹介します。

  • 愛媛県 新居浜市:NHK松山放送局の記録によると、昭和南海地震の際、液状化とみられる現象を経験したとの住民証言が掲載されています。
  • 香川県 高松市:住民へのアンケート調査にて、「水が噴き上げてきた」という証言や、郷東町などでの「液状化・地割れ」の記録が残されています。

これらの記録は、南海トラフ地震の被害想定を単なる予測として終わらせず、現在の建築予定地の履歴と重ね合わせて検討するための手がかりとなります。

※参照元:NHK松山放送局(https://www.nhk.or.jp/matsuyama/info/articles/310/049/08/
※参照元:高松市 住民アンケート「昭和南海地震」(https://www.city.takamatsu.kagawa.jp/kurashi/kosodate/bunka/rekishi/h24snjiak_houkoku.files/shouwanankaijisinanke-to.pdf
※アンケート調査期間:平成24年4月6日~平成25年3月末日(アンケート結果は平成25年2月末日までのもの)/調査方法:アンケート設置・受付・配布による/調査対象・調査会社:記載なし

設計・発注前に建築士が確認すべき要点

南海トラフ地震を想定した液状化対策は、書類や計画の準備段階からスタートします。発注前に押さえておきたい要点を3つのポイントに整理しました。

①予定地のハザード情報を自治体単位で確認

徳島県のオープンデータや高知県防災マップ、香南市の液状化マップなど、地域単位で公開されているハザード情報の粒度は年々細かくなっています。設計の初期段階でこれらを確認しておくことで、追加調査の必要性を早い段階から施主へ提案できるようになります。

②SWS試験に必要な補助調査を上乗せする

SWS試験だけでは砂層の粒度や正確な地下水位が把握できないことは、前述の通りです。発注段階では、この認識を仕様書レベルまで落とし込むことが重要になります。具体的には、以下の項目を発注仕様に明記しておくと、現場での「言った・言わない」を防ぎやすくなります。

  • SWS試験に加えて実施する調査項目(地下水位実測、簡易サンプリング等)
  • 追加調査が必要と判断する基準(液状化想定エリア内かどうか等)
  • 追加費用・工期への影響と、施主への説明タイミング

③地盤保証の免責事項と液状化対応を確認

地盤保証サービスの中には、液状化などの自然災害に起因する被害を免責事項(補償の対象外)としているプランが存在します。契約前に、保証書や約款で以下の点を確認しておくと安心です。

  • 液状化そのものが免責事象として明記されているか
  • 免責の対象が「予見可能な液状化」のみか、液状化全般か
  • 免責となる場合、地震保険や別プランで補完できるか

まとめ

南海トラフ地震によって四国地方が受ける液状化リスクについては、県や市町村単位のハザード情報が充実してきており、事前の状況把握がしやすくなっています。液状化想定エリアで建築を計画する際は、SWS試験単独に頼るのではなく、粒度試験や地下水位の実測を組み合わせることが大切です。さらに、地盤保証の免責範囲や契約内容まで含めて発注や設計の計画を組み立てることが、より安全な施工の実現につながります。

よくある質問(Q&A)

Q1. 南海トラフ地震で四国のどこが液状化しやすいですか?

A. 旧河道や氾濫平野、埋立地・干拓地、過去に池や水路を埋め立てた宅地などが、四国における想定エリアです。具体的なリスクの度合いは地域差が大きいため、県・市町村が公開するハザード情報で建築予定地の位置を確認することが、調査の第一歩となります。

Q2. 液状化リスクを見抜くために必要な地盤調査は何ですか?

A. 住宅ではSWS試験を基本にしつつ、地下水位の実測と砂層の粒度試験を追加するのが有効です。中〜大規模建物や埋立地では、標準貫入試験と粒度試験、必要に応じてPS検層や表面波探査でせん断波速度を確認します。

Q3. 地盤保証は液状化にも対応しますか?

A. 保証会社や商品によって扱いが異なります。地震や豪雨など自然災害に起因する地盤変動は免責となる商品も多いため、契約前に免責事項を必ず確認しましょう。地震保険との併用で補完する運用が一般的です。

Q4. SWS試験だけで液状化の判定はできないのですか?

はい。SWS試験単独では土の直接採取ができず、液状化判定に不可欠な「砂層の粒度」が詳細に把握できません。そのため、地下水位の測定やサンプリング調査などの補助調査を組み合わせる必要があります。

Q5. ハザードマップでリスクが高い場合、どう対応すべき?

A. 設計の初期段階で追加調査(サンプリングや粒度試験など)が必要になる旨と、それに伴う費用や日程を施主へ説明してください。事前の合意形成が、後の予算や工期トラブルを防ぐ鍵となります。