四国での住宅・施設計画では、南海トラフ地震にどう備えるかが避けて通れないテーマです。とくに液状化は、揺れが収まった後にも建物の沈下や傾きを引き起こすため、建築士や工務店にとって発注前の判断が問われます。
本記事では、南海トラフ地震で四国が受ける液状化リスクを整理し、地域ごとの特徴と、地盤調査で押さえておきたい項目を解説します。
このページで分かること
内閣府の被害想定(南海トラフ巨大地震の被害想定 第一次報告)によれば、四国では瀬戸内海沿岸や徳島県沿岸部を中心に、液状化の発生可能性が大きい地域が広がっているとされています。また、内閣府「南海トラフの巨大地震モデル検討会(第二次報告)」に基づく資料では、徳島県東部や瀬戸内海沿岸、高知平野などの沿岸平野部に加え、吉野川・四万十川といった河川沿いでも、強い揺れに伴う液状化・地盤沈下が四国全域で発生すると想定されています。
液状化現象は、地下水位が高く緩く堆積した砂層に対して強い揺れが加わることで発生します。四国では、旧河道や氾濫平野、埋立地・干拓地、過去に池や水路を埋め立てた宅地などが、液状化の起こりやすい典型的な地形として挙げられます。
四国4県では、被害想定やハザード情報の公開状況にそれぞれ特色があります。計画を立てる際は、まず建築予定地が属する県や市町村の公開情報を確認することが大切です。
液状化の判定においては、標準的な地盤調査だけでは情報が不足する場合があります。液状化しやすい地形に建物を建築する際は、以下のように調査方法を組み合わせることが推奨されます。
住宅の一次調査として広く用いられるSWS(スクリューウエイト貫入試験)単独では、砂層の粒度や正確な地下水位を把握しきれません。そのため液状化想定エリアでは、SWS試験に加えて簡易サンプリングや地下水位の実測を実施し、砂層の性状と地下水条件を把握する手法が一般的です。
中〜大規模建物や埋立地では、標準貫入試験でN値と土質を把握し、粒度試験で液状化しやすい細砂層かどうかを判定します。四国の埋立地や旧河道では、地表付近から比較的深い位置まで緩い砂層が分布しているケースもみられるため、粒度試験まで実施しないと精度が落ちる可能性があります。
PS検層や表面波探査は、地盤のせん断波速度(Vs)を測定し、液状化に対する抵抗力を推定するうえで有効な手法。一般的な宅地規模では省略されることもありますが、複数棟の分譲地や商業施設の開発においては、投資対効果に見合う選択肢となります。
四国地方では、1946年(昭和21年)に発生した昭和南海地震の際、沿岸部を中心として液状化が起こった記録が残されています。今後の想定を組み立てるうえで参考となる、公的機関や報道機関の資料からいくつかの実例をご紹介します。
これらの記録は、南海トラフ地震の被害想定を単なる予測として終わらせず、現在の建築予定地の履歴と重ね合わせて検討するための手がかりとなります。
南海トラフ地震を想定した液状化対策は、書類や計画の準備段階からスタートします。発注前に押さえておきたい要点を3つのポイントに整理しました。
徳島県のオープンデータや高知県防災マップ、香南市の液状化マップなど、地域単位で公開されているハザード情報の粒度は年々細かくなっています。設計の初期段階でこれらを確認しておくことで、追加調査の必要性を早い段階から施主へ提案できるようになります。
SWS試験だけでは砂層の粒度や正確な地下水位が把握できないことは、前述の通りです。発注段階では、この認識を仕様書レベルまで落とし込むことが重要になります。具体的には、以下の項目を発注仕様に明記しておくと、現場での「言った・言わない」を防ぎやすくなります。
地盤保証サービスの中には、液状化などの自然災害に起因する被害を免責事項(補償の対象外)としているプランが存在します。契約前に、保証書や約款で以下の点を確認しておくと安心です。
南海トラフ地震によって四国地方が受ける液状化リスクについては、県や市町村単位のハザード情報が充実してきており、事前の状況把握がしやすくなっています。液状化想定エリアで建築を計画する際は、SWS試験単独に頼るのではなく、粒度試験や地下水位の実測を組み合わせることが大切です。さらに、地盤保証の免責範囲や契約内容まで含めて発注や設計の計画を組み立てることが、より安全な施工の実現につながります。
A. 旧河道や氾濫平野、埋立地・干拓地、過去に池や水路を埋め立てた宅地などが、四国における想定エリアです。具体的なリスクの度合いは地域差が大きいため、県・市町村が公開するハザード情報で建築予定地の位置を確認することが、調査の第一歩となります。
A. 住宅ではSWS試験を基本にしつつ、地下水位の実測と砂層の粒度試験を追加するのが有効です。中〜大規模建物や埋立地では、標準貫入試験と粒度試験、必要に応じてPS検層や表面波探査でせん断波速度を確認します。
A. 保証会社や商品によって扱いが異なります。地震や豪雨など自然災害に起因する地盤変動は免責となる商品も多いため、契約前に免責事項を必ず確認しましょう。地震保険との併用で補完する運用が一般的です。
はい。SWS試験単独では土の直接採取ができず、液状化判定に不可欠な「砂層の粒度」が詳細に把握できません。そのため、地下水位の測定やサンプリング調査などの補助調査を組み合わせる必要があります。
A. 設計の初期段階で追加調査(サンプリングや粒度試験など)が必要になる旨と、それに伴う費用や日程を施主へ説明してください。事前の合意形成が、後の予算や工期トラブルを防ぐ鍵となります。