中大規模木造建築では、建物の用途や規模、荷重条件、基礎形式などに応じて地盤条件を把握する必要があります。木造だから一律に特別な調査が必要になるわけではなく、建物計画と敷地条件を踏まえて調査内容を検討することが重要です。
本記事では、大規模木造の地盤調査で確認したいポイントを解説します。
このページで分かること
地盤調査は、建物を支える地盤の状態を把握し、不同沈下などのリスクを検討するための重要な資料となります。中大規模木造建築において、「木造は鉄骨造やRC造より自重が軽いから、地盤調査を簡略化できる」と一律に考えることは適切ではありません。
一方で、「大規模木造だから必ず特殊な調査が必要になる」というわけでもありません。構造種別だけで判断せず、建物の用途や規模、敷地条件などを総合的に踏まえて調査計画を立てることが基本です。事前に地盤条件を把握することで、必要な基礎形式や地盤対策を検討するための判断材料を得られます。
戸建て住宅と中大規模木造建築では、建物の用途や規模、構造計画などの条件が異なります。
ここでは、調査計画を立てる際に考慮したい違いを整理しました。
住宅と中大規模木造では、建物の用途や規模によって荷重条件が異なります。店舗や事務所、福祉施設などでは、用途に応じて大空間やさまざまな平面計画が求められることがあり、柱や壁の配置、スパンなどによって荷重条件も変化。積載荷重も用途ごとに異なるため、建物にどのような荷重が作用するのかを把握し、それに応じて地盤調査の内容を検討します。
基礎形式や構造計画を踏まえて、必要な地盤情報を整理する視点も重要です。布基礎やベタ基礎、杭基礎など、採用する基礎形式によって確認すべき地盤の深さや強度などの条件は異なるもの。そのため、構造設計者と早い段階から連携し、「どの深さの地盤情報が必要か」「どの程度の精度が求められるか」などを整理しておくことが、調査計画の前提となります。
敷地特有の条件も、調査方法を検討する際の要素となります。敷地内に盛土や造成の履歴があるか、擁壁が隣接しているか、高低差はあるかなど、周辺環境を含めて地盤の状態を確認。既存構造物の基礎が地中に残置されている場合もあるため、過去の土地利用状況まで含めて敷地条件を整理することが、調査計画の立案につながります。
基礎設計や地盤対策を検討するためには、地盤調査を通じて必要な情報を取得することが欠かせません。
ここでは、確認しておきたい項目を解説します。
まず確認したいのは、建物の荷重を支える地盤の位置や性状です。支持層が地表面からどの程度の深さにあるのか、また地盤がどの程度の強度を持つのかを把握。これらの情報をもとに、直接基礎で対応できるか、杭基礎などの対策が必要かを検討します。
建物の荷重によって地盤が不均等に沈む「不同沈下」のリスクも考慮すべきポイント。地盤の状態だけでなく、建物の平面形状や荷重の偏りなどによっても沈下リスクは変わります。敷地内で地盤条件にばらつきがある場合は、その分布や状態を把握し、不同沈下などのリスクを評価する材料とします。
地盤改良工事が必要になった場合に備え、地層の構成や土質をあらかじめ把握しておくことが重要です。対象となる地盤が砂質土なのか粘性土なのか、あるいは特殊な土質を含んでいるかによって、検討する地盤改良工法などが変わるためです。土質や地層構成の把握は、適切な地盤改良計画を検討するための基礎となります。
これらの情報を得るために、建物や敷地条件に応じて適切な調査方法を選定します。簡易的な試験で必要な情報を取得できるケースもあれば、ボーリング調査や標準貫入試験などによって、土の状況や深い地盤の状態を確認するケースもあります。必要な深度や求められる情報に応じて、調査方法や試験を組み合わせることが重要です。
地盤調査を終えた後は、「調査→地盤評価→基礎形式の検討→必要に応じて地盤改良」という一連の流れで設計に反映させます。ここで注意したいのは、「地盤調査結果の数値だけを見て一律に判断してはいけない」という点です。調査データをもとに地盤条件を評価し、中大規模木造ならではの建物条件(荷重の大きさや偏り、スパンなど)と照らし合わせて、基礎や地盤改良の要否を総合的に検討します。
大規模木造のプロジェクトでは、地盤調査の結果を構造設計者や施工者と速やかに共有し、建物全体の計画と連動させて基礎設計を進めることが求められます。
調査会社へ依頼する際は、建物の概要や構造計画を早い段階で共有することが重要です。調査会社が設計担当者や地盤改良業者と円滑に連携できる体制を持っているかも、調査会社を選定する際の判断材料となります。単に調査報告書を提出するだけでなく、結果から読み取れるリスクや必要な対応策まで説明できる体制かどうかも、委託先を選ぶ際のポイントです。
また、地盤保証を利用する場合は事前確認が必要です。保証制度や提供会社ごとに、対象となる建物の規模や用途、求められる調査方法、提出書類などの適用条件が異なります。大規模木造を計画する段階から、利用する保証制度の条件と地盤調査の要件をあわせて整理しておきましょう。
中大規模木造建築の地盤調査は、木造という理由だけで簡略化せず、建物規模や基礎形式、敷地条件を踏まえて計画する必要があります。適切な調査で地盤条件を把握し、基礎・地盤改良計画の検討につなげることが大切です。
A. 一律にそうとはいえず、建物規模・用途・荷重・基礎形式・敷地条件などによって必要な調査内容が変わるため、建物の特性に応じて調査内容を設定します。
A. 木造であることだけを理由に調査を簡略化できるわけではなく、建物と敷地条件から必要な地盤情報を判断します。荷重の偏りなども含めて調査計画を検討します。
A. 特定の方法を一律に選ぶのではなく、建物規模、地盤条件、必要な深度や精度などを踏まえて選定します。状況に応じてボーリング調査などを組み合わせるケースもあります。
A. 調査結果をもとに地盤条件を評価し、建物条件と合わせて基礎や地盤改良の必要性を検討する流れとなります。調査データ単体ではなく、建物計画全体との連携が重要です。