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ハイスピードコーポレーションの地盤調査データ改ざん問題とは?

2021年、愛媛県松山市に本社を置くハイスピードコーポレーションで、元社員が担当した地盤調査の一部について、調査データを流用したり、報告書作成時に数値を書き換えたりする不正行為が行われていたことが公表されました。

同社が元社員の担当案件を調査した結果、元社員が作成した地盤調査報告書202件のうち、76件で不正行為が確認されています。地域別では愛媛県65件、高知県10件、香川県1件でした。

地盤調査の結果は、建物の基礎設計や地盤改良の要否を判断するための重要な資料です。そのため、実際とは異なる調査データが報告書に記載されれば、設計者や施工会社が地盤の状態を適切に判断できなくなるおそれがあります。

ここでは、ハイスピードコーポレーションが公表した資料や第三者有識者による評価報告書をもとに、どのような不正が行われたのか、なぜ社内の確認体制で防げなかったのか、その後どのような安全性確認や再発防止策が行われたのかを整理します。

※本記事では、2021年当時に発生・公表された不正事案と、その後の調査・再発防止策を分けて紹介しています。

ハイスピードコーポレーションの地盤調査不正の概要

ハイスピードコーポレーションの公表や第三者評価によると、不正を行ったのは元社員1名です。

元社員は2020年4月に入社し、研修を経た後に地盤調査業務を担当していました。2021年4月21日に不正が発覚するまでに202件の地盤調査報告書を作成しており、そのうち実際にSWS試験を行った案件は196件でした。

社内調査の結果、196件のSWS試験のうち76件で不正が確認されています。

項目 内容
発覚年 2021年
対象会社 ハイスピードコーポレーション株式会社
不正を行った人物 元社員1名
元社員が作成した地盤調査報告書 202件
SWS試験を実施した案件 196件
不正が確認された件数 76件
主な不正内容 他現場の調査データの流用、報告書作成時の調査データの書き換え
対象地域 愛媛県・高知県・香川県

具体的にどのようなデータ改ざんが行われていた?

第三者有識者による評価報告書では、今回確認された不正は大きく2種類に整理されています。

必要な地盤調査を行わず、他現場のデータを流用

1つ目は、現場で必要な地盤調査の全部または一部を行わず、不足した調査データを別の現場で取得した地盤調査データで補う方法です。

元社員は調査現場には赴き、各調査地点の写真撮影を行っていましたが、通常1現場で5地点程度行うSWS試験について、まったく試験を行わなかったケースや、1~4地点程度だけ調査して残りを省略したケースがあったとされています。

調査を行わなかった地点については、別の現場の地盤調査データを流用し、ファイル名などを変更して保存することで、その現場で取得したデータであるかのような地盤調査報告書を作成していました。

実際に調査したデータを報告書作成時に書き換え

2つ目は、現場でSWS試験自体は行っているものの、地盤調査報告書を作成する際にデータを書き換える方法です。

第三者評価では、地盤調査報告書作成用ソフトを使い、調査貫入深さや荷重(Wsw)、半回転数(Na)などの数値を変更していたことが確認されています。

例えば、実際の調査が浅いことを隠すためにデータを付け加えて調査深度を深く見せたり、調査途中で地盤が弱くなっている部分のデータを除いたりしていたケースがあったとされています。

SWS試験は、建物を支える地盤の状態を確認するために広く用いられる調査方法です。調査結果を正しく基礎設計や地盤改良の判断につなげるためには、現場で取得したデータがそのまま報告書へ反映されていることが重要です。

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不正はどのように発覚した?

不正が判明したのは2021年4月21日です。

地盤調査報告書を上司が確認していた際、報告書に添付されたデータに不自然な点が見つかり、社内で確認を行ったことが発覚のきっかけとなりました。

当初、ハイスピードコーポレーションは33件のデータ改ざんを確認したと公表しましたが、その後さらに詳細な社内調査を実施した結果、2021年9月には不正件数が76件であることを公表しました。

さらに追加調査を行い、76件を超える不正がないか、元社員以外の調査担当者にも同様の行為がないかについて確認しています。

愛媛・高知・香川の76件で不正を確認

2021年9月6日の公表では、不正が確認された76件の地域別内訳は以下の通りです。

都道府県 不正件数
愛媛県 65件
高知県 10件
香川県 1件
合計 76件

特に愛媛県での件数が多く、四国で実際に発生した地盤調査不正の代表的な事例のひとつとなりました。

ただし、この事例だけをもって四国の地盤調査会社全体に同様の問題があると判断することはできません。重要なのは、個別の地盤調査会社がどのような調査・データ管理・チェック体制を整えているかを確認することです。

他の社員にも同様の不正はあった?

元社員による不正が発覚したことを受け、ハイスピードコーポレーションは他の調査担当者についても社内調査を行っています。

2020年11月1日から2021年4月21日までに、元社員以外の13名が担当した747件の地盤調査について確認した結果、同社の社内調査では不正は確認されませんでした。

第三者有識者による評価でも、この747件から126件を無作為に抽出して検証が行われ、ハイスピードコーポレーションの社内調査結果と異なる結果は確認されなかったとされています。

また、第三者評価では、元社員が不正を行うことでハイスピードコーポレーションが地盤改良工事を増やすなどの利益を得ていた可能性についても検証されました。

再地盤調査後に行った地盤改良の必要性の再判定では、再調査前から判定結果が変わった物件はなく、第三者評価では、会社が利益誘導のために元社員へ不正行為を行わせた事実はなかったとされています。

なぜ地盤調査データの改ざんを防げなかった?

今回の事例では、元社員個人による不正だけでなく、当時のデータ管理や報告書確認の仕組みにも課題があったことが第三者評価で指摘されています。

報告書作成ソフトでデータを変更できた

当時使用されていた地盤調査報告書作成ソフトには、イレギュラーな状況が発生した場合に内容を修正するための機能がありました。

本来は必要な修正を行うための機能ですが、調査員がパソコン上で調査貫入深さや荷重などのデータを変更することもできる状態でした。

第三者評価では、容易にデータを修正できるシステムだったことが、管理体制上の問題点のひとつとして挙げられています。

「調査データは正しい」という前提で報告書をチェックしていた

ハイスピードコーポレーションでは、地盤調査員が作成した報告書について、支店長や営業担当者による確認を行っていました。

しかし、当時の確認は「調査データ自体は正しく反映されている」という前提で行われており、主に文章の記載ミスや誤字脱字などを確認するものだったとされています。

そのため、現場の調査機から取得された原データと、最終的な報告書に記載されたデータが一致しているかを十分に照合する体制にはなっていませんでした。

報告書に承認者がいるだけではなく、何をチェックしているのかまで明確にすることが重要だとわかる事例です。

第三者評価では管理体制上の課題も指摘

第三者評価では、地盤調査員が調査データと異なる内容の報告書を作成することを会社側が想定していなかったことについて、危機管理意識の不足があったと指摘されています。

地盤調査は建物の安全性に関わる重要な業務です。担当者個人の善意だけに依存するのではなく、不正を行おうとしても行いにくいシステムや、原データを検証できる仕組みを整える必要があります。

76件の建物の安全性はどう確認された?

地盤調査に不正があったことと、対象となった建物に安全上の問題があることは分けて考える必要があります。

ハイスピードコーポレーションは、不正が確認された76件について再地盤調査や地盤の安全性確認を行いました。

76件のうち58件で再地盤調査を実施

第三者評価報告書によると、不正対象76件のうち58件で再地盤調査が行われました。

そのうち18件については、第三者である一般社団法人ハウスワランティが再調査に立ち会い、地盤調査の作業手順や地盤調査報告書の内容を確認しています。

第三者が立ち会っていない再地盤調査についても、社員2名以上の体制で実施されたとされています。

特定行政庁への報告では建築基準法違反0件

不正対象となった76件については、地盤の許容支持力や建物荷重などを改めて確認し、管轄する特定行政庁へ建築基準法第12条第5項に基づく報告が行われました。

ハイスピードコーポレーションの2021年12月10日の公表によると、76件すべての報告が受理され、地盤の耐力不足による建築基準法違反と判断された物件は0件だったとされています。

ただし、結果として建築基準法違反が確認されなかったことと、地盤調査データを不正に改ざんした行為そのものは別の問題です。調査データの信頼性を損なう行為が許容されるわけではありません。

建築士・工事施工者・建築主にも説明が行われた

地盤調査会社が作成した報告書は、建築士による基礎設計や、建設会社・工務店による施工判断に利用されます。

今回の事案では、ハイスピードコーポレーションが特定行政庁へ提出する安全性確認の書面について、対象となる建築士や工事施工者にも事前に提出して内容確認を行い、そのうえで建築主へ説明したことが第三者評価で確認されています。

地盤調査会社で問題が発生したからといって、建築士や建設会社が常に法的責任を負うとは限りません。実際の責任は、契約内容や設計・施工への影響、各事業者がどのような確認や判断を行ったかなどによって異なります。

一方で、地盤調査報告書は設計の判断材料となるため、発注者や設計者側も調査結果を受け取るだけでなく、不自然な点がないか、必要な調査が行われているかを確認することが重要です。

地盤調査と建築士の法的責任について詳しく見る

その後どのような再発防止策が行われた?

ハイスピードコーポレーションは、不正発覚後に地盤調査のデータ管理や報告書作成方法を見直しています。

第三者評価では、単純にチェックする人数を増やすだけではなく、そもそも担当者が調査データを不正に変更できない仕組みをつくることが重要とされています。

調査データを直接管理する仕組みへ変更

不正発覚後は、現場の地盤調査機で取得された原データを管理者が確認・保存し、報告書にも添付するなど、調査データと報告書を照合しやすい体制へ変更されています。

また、データをサーバーへ送信し、取得した調査データから報告書を作成することで、担当者が途中で自由に数値を変更しにくい仕組みが導入されています。

現在はGPSやデータ暗号化による透明性向上を訴求

現在、ハイスピードコーポレーションはSWS試験で「GROUND STAGE」という地盤調査システムを採用しています。

公式サイトによると、GPSによって調査日時や位置情報を表示する機能を備え、人為的に操作できない仕組みとし、さらにデータを暗号化してサーバーへ送信することで安全性を確保しているとしています。

これは2021年当時の地盤調査体制とは異なる、現在の取り組みです。過去の事案を確認する際には、当時どのような問題があったかだけでなく、その後どのような改善が行われているかまで分けて確認することが大切です。

この事例から考える「透明性の高い地盤調査」とは?

今回の事例からわかるのは、地盤調査を実施して報告書を発行するだけでは、調査の信頼性を十分に確認できない場合があるということです。

地盤調査会社を比較する際は、調査方法や価格だけではなく、取得したデータをどのように管理しているかにも目を向けましょう。

調査データを自由に書き換えられない仕組みがある

担当者が取得した数値を自由に変更できる状態では、チェック担当者がいたとしても不正を見抜けない可能性があります。

調査機から取得した原データが自動保存されるか、数値を変更した場合に履歴が残るかなど、人為的な変更を防止・検知できる仕組みがあるか確認することが重要です。

いつ・どこで取得したデータなのか確認できる

別現場のデータ流用を防ぐには、その調査データが「いつ、どこで取得されたものなのか」を確認できることが重要です。

GPSによる位置情報や調査日時など、取得したデータと実際の調査現場を紐づけて管理できれば、後から調査内容を検証しやすくなります。

原データと地盤調査報告書を照合している

今回の事例では、報告書の確認自体は行われていましたが、調査データは正しいという前提でチェックされていました。

そのため、会社選びでは「ダブルチェックしています」という説明だけではなく、現場で取得した原データと最終的な地盤調査報告書を照合しているかまで確認するとよいでしょう。

地盤調査データの保管・改ざん防止策について詳しく見る

地盤調査会社を選ぶときに確認したいポイント

地盤調査を依頼する側が、調査会社の内部業務をすべて確認することは困難です。しかし、不正を防止する仕組みについて質問することは、依頼先を比較する際の判断材料になります。

  • 地盤調査機で取得した原データが自動保存されるか
  • GPSなどで調査場所を確認できる仕組みがあるか
  • 調査日時の記録が残るか
  • 原データを後から確認できるか
  • 調査担当者が数値を自由に変更できない仕組みになっているか
  • データを修正した場合に履歴を確認できるか
  • 原データと地盤調査報告書を別の担当者が照合しているか
  • 不正や異常値を検知する仕組みがあるか
  • 問題が発生した場合に再調査できる体制があるか
  • 第三者による確認や評価を取り入れているか

知名度や費用だけではなく、「調査データが正しいことを後から確認できるか」という透明性を会社選びの基準に含めることが重要です。

まとめ|地盤調査会社はデータの透明性まで確認しよう

2021年に発覚したハイスピードコーポレーションの地盤調査不正では、元社員が担当したSWS試験196件のうち76件で、他現場の地盤調査データの流用や、報告書作成時のデータ書き換えが確認されました。

地域別では愛媛県65件、高知県10件、香川県1件です。一方、元社員以外の担当者が行った747件については社内調査で不正は確認されず、第三者評価による抽出検証でも社内調査と異なる結果は確認されませんでした。

不正対象76件については再調査や安全性確認が行われ、特定行政庁への報告では地盤の耐力不足による建築基準法違反と判断された物件は0件だったと公表されています。

また、その後は調査データの管理方法が見直され、現在はGPSによる日時・位置情報の確認やデータ暗号化など、地盤調査の透明性を高める仕組みが導入されています。

今回の事例から発注者が学びたいのは、「報告書が発行されているから安心」と考えるのではなく、現場で取得したデータがそのまま報告書へ反映されていることを確認できる仕組みがあるかを見ることです。

地盤調査会社を選ぶ際は、調査方法や価格だけでなく、原データの保存方法、GPS等による記録、データの改ざん防止、報告書のチェック方法など、「データの透明性」まで確認したうえで依頼先を検討しましょう。

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