地盤改良工事では、施工計画どおりに工事を進めるだけでなく、設計・仕様で求められる品質や性能を満たしているかを確認しておくことが欠かせません。
本記事では、品質管理の基礎的な考え方から、施工前・施工中・施工後の確認ポイント、代表的な試験・検査方法まで分かりやすく解説します。
このページで分かること
地盤改良における品質管理とは、設計図書や仕様書で求められる品質・性能を満たしているか、試験結果、出来形、使用材料、施工記録などを照合して評価することです。強度試験だけでなく、改良範囲や深度、材料・配合、施工実績も確認します。試験結果と施工記録を対応付けることで、要求された内容に沿って施工されたかを把握できます。
施工管理は、品質・原価・工程・安全などを含め、工事全体を計画どおりに進めるための総合的な管理のことです。品質管理はその中に含まれる重要な一要素であり、設計・仕様で求められる性能に適合しているかを客観的に確認・評価する役割を担います。
発注・管理側では、工事全体の進捗を把握するとともに、提出された試験結果や施工記録をもとに、設計・仕様で求められる品質・性能に適合しているかを確認することが重要です。
品質確認では、大きく「強度・性能」「出来形」「材料・配合」「施工条件・施工実績」の4項目を確認します。それぞれについて、設計・仕様で定められた内容と実際の施工結果を照合することが基本です。
設計・仕様で求められる強度や性能を満たしているかは、重要な確認項目です。強度試験の結果を確認する際は、報告書に記載された数値を、設計図書や特記仕様書などで定められた基準と比較します。供試体の採取位置、材齢、本数、試験方法、判定基準も、指定された条件に沿っているか確認しましょう。
改良範囲や深度、柱状改良の場合は改良体の位置・径・配置などが、設計図書や施工計画で求められた出来形に適合しているかを確認します。施工位置図や出来形図、施工記録などを用いて、計画した範囲や深度と施工実績を照合します。工法に応じて傾斜や杭頭天端なども確認対象となるため、当該現場で指定された出来形項目を把握しておくことが重要です。
使用する固化材の種類・仕様、使用量、配合条件などが、設計・施工計画や事前の配合検討結果に沿っているかをチェックし、納入伝票や材料証明書、配合表、施工記録などを照合し、指定された材料が使用され、計画した配合で施工されているかを把握しましょう。セメント系固化材を用いる工法では、対象地盤に対して要求される性能を満たすため、事前に固化材の添加量と強度発現の関係を調べて配合を検討することが一般的です。
施工中の実績データは、計画した施工が行われたかを確認するための判断材料になります。工法に応じて、流量、回転数、施工深度、電流値などの記録を確認します。施工計画や管理基準から外れた数値や記録の欠落がないかを確認し、気になる点があれば、その理由や対応内容を地盤改良会社と確認しましょう。施工実績は、試験結果や出来形とあわせて評価することが重要です。
品質確認では、施工前の設計条件や必要に応じた配合検討、施工中の実績記録、施工後の試験・検査を関連付けて評価します。それぞれ確認する内容が異なるため、施工後の試験結果だけでなく、施工に至るまでの記録もあわせて確認します。
着工前には、地盤調査結果や設計条件を確認します。セメント系固化材を用いる工法では、必要に応じて現地の土と使用予定の固化材による室内配合試験を行い、添加量と強度発現の関係から、要求性能を満たすための配合を検討します。試験結果をもとに配合を設定する際は、対象地盤や設計条件に合った検討内容になっているかを確認します。
施工中は、施工位置ごとの実績データや記録を確認し、施工計画・設計条件に沿って作業が行われたかを照合します。確認対象には、工法に応じて施工深度、固化材の使用量や注入量、回転数などが含まれます。
施工管理システム等を利用してデータを記録する方法もあります。システムの有無だけで判断せず、必要な項目が記録されているか、施工位置と記録が正しく対応しているか、管理基準から外れた値がある場合に明確な説明がなされているかを確かめましょう。
施工後は、仕様書などで定められた試験・検査の結果と、出来形や施工記録を照合します。セメント系固化材を用いる工法では、改良土や改良体から採取した試料・コアの強度試験などを通じて、要求される性能を満たしているかを確認します。
試験結果を評価する際は、強度の数値だけでなく、試験対象の位置、供試体数、材齢、試験方法、判定基準も確認します。また、強度試験だけでは改良範囲や施工深度まで判断できないため、出来形や施工中の記録と照合することが重要です。
以下は、主にセメント系固化材を用いる地盤改良で実施される試験・確認方法の例です。地盤改良には複数の工法があり、試験の種類や条件は工法・設計・仕様によって決まります。
室内配合試験は、施工前に現地の土と使用予定の固化材を用いて、添加量と強度発現の関係を調べる試験です。添加量を変えた供試体を作製し、一軸圧縮強さを測定します。その結果をもとに、要求される性能を満たすための配合を検討します。試験条件は、採用工法や設計・仕様に沿って設定します。
一軸圧縮試験は、供試体に圧縮力を加えて圧縮強さを測定する試験方法です。固化材を用いた地盤改良では、室内配合試験で作製した供試体や、施工後に改良土・改良体から採取した試料などの強度確認に用いられます。
試験結果を確認する際は、供試体の作製・採取方法、採取位置、材齢、本数、試験方法が仕様書で定められた条件に沿っているかを確認します。そのうえで、得られた強度を当該現場の基準と比較します。
表層改良などでは、フェノールフタレイン反応を用いて固化材の混合状況を補助的に確認する方法があります。試料の断面に試薬を用い、色の分布から固化材の混ざり具合を確認します。
ただし、この方法だけで改良体の強度や品質全体を判定することはできません。確認できる範囲を踏まえ、強度試験や施工記録などとあわせて評価します。
発注・管理側では、現場で定められた基準、試験条件、施工記録の3点を押さえることで、提出された品質資料を確認しやすくなります。
設計図書、特記仕様書、発注者基準などを確認し、要求される強度・性能、改良範囲、確認する試験や出来形項目を把握します。他の現場で使われた数値や基準をそのまま当てはめず、当該現場で定められた内容に沿って判断することが重要です。
施工前に、どの試験をいつ実施し、どの位置から何本の供試体を採取するのか、どの材齢・判定基準で評価するのかを整理しておきます。試験方法や判定条件、施工記録の提出範囲について、地盤改良会社と事前に協議し、双方で認識を合わせておくことが大切です。なお、保証や契約上の取り扱いについては、個別の契約書や仕様書の記載に基づいてチェックすることが基本です。
強度試験などの結果は、施工中の実績データや施工写真、出来形の記録とあわせて照合します。例えば、試験報告書に記載された採取位置を施工位置図と突き合わせ、その位置における施工深度や材料使用量の記録まで目を通すことが大切です。記録に欠落や不整合が見られる場合は、地盤改良会社と内容を確認し、必要に応じて経緯の説明や補足資料の提出を受けたうえで評価します。
地盤改良の品質管理では、設計・仕様で求められる強度・性能はもちろん、出来形、材料・配合、施工実績まで総合的に確認することが重要です。
施工前の計画・配合検討から施工中の実績記録、施工後の試験結果までを照合し、施工内容が設計・仕様に適合しているかを評価しましょう。
A. 主に「強度・性能」「改良範囲や深度などの出来形」「材料・配合」「施工条件・施工実績」の4項目を確認します。単に試験数値を見るだけでなく、施工時の実績データと照らし合わせて総合的に評価することがポイントです。
A. セメント系固化材を用いる工法では、施工前に配合を検討する室内配合試験や、改良土・改良体の強度を調べる一軸圧縮試験などがあります。実施する試験は、採用工法や設計・仕様に沿って確認します。
A. はい。施工記録や施工写真は、計画に沿って施工されたかを確認するための判断材料です。工法に応じた施工深度や材料使用量などの記録を、試験結果や出来形と照合します。提出対象となる記録は、仕様書や発注条件で確認します。
A. 必ず行うものではありません。一軸圧縮試験は、固化材を用いた地盤改良などで強度確認に用いられる代表的な試験方法です。実施の有無や試験条件は、採用工法や設計・仕様、発注者基準に従って確認します。
A. 施工前に、実施する試験、判定基準、試験時期、施工記録の提出範囲を地盤改良会社と共有しておき、施工後は、試験結果の数値だけでなく、試験条件や対象箇所、施工実績の記録も照合します。